つむぎとストリートアクトに出た帰りに、お花屋さんの前を通る。つむぎは、次に客演をする劇団宛にお花をそこ頼んでいて、その間、ふらりふらりとお花を見ていたオレをにこにこ見ていた。
「三角くんは、なにか気になる花あった?」
「うーん……さんかくの葉っぱとか、お花とかあるかな〜って思ったけど、見つけられなかったー」
 しょぼーん、と肩を落としたオレは、あれ、とつむぎが指をさす方を覗くと、たくさんのさんかくの葉っぱをつけた木があった。
「さんかくの葉っぱだ!」
「うん、アカシアっていうんだよ。ここだと……黄色とオレンジの花が咲いてる二種類があるみたいだね」
 たしかに、てんまの色とオレの色のお花が咲いていた。オレの色のお花の方がいいかな、と思ったのは、あげたい人がいたからだった。
「さんかくの葉っぱの、黄色いお花が咲いてる方、ください!」
「どれくらいでお包みいたしますか? プレゼントなら花束とか? 最近でしたら、大振りの花を混ぜてミニぶーけブーケなんかも定番ですね」
「つむぎ〜……」
 おねーさんがなんだかいっぱい教えてくれてるんだと思うけど、全然わからなくてつむぎにばとんたっちだ! つむぎがお水をくれると、気持ちいいんだって。今度、オレにもかけてもらおうかなぁ。
「じゃあ、アカシアの──葉の多いところを二本と、花の通常の部分を三本、それに、あ、アレ入ってます?」
「ああ、ありますよ! じゃあその二種類でミニブーケって感じでいいですかね?」
「うん!」
 よくわからないまま頷いたけれど、つむぎはちゃんと教えてくれるからだいじょーぶ! 店員さんの手でするすると綺麗にまとまっていくお花は、水から離れるのにすごくきれいなままで、オレたちがお芝居してるのと同じなのかもしれないな、なんて思った。
「三角くん、さっきのさんかくの葉っぱのお花はね、──って花言葉を持ってるんだ」
「えっ!? つむぎ、しってたの……?」
「うーん、なんとなく、かなぁ。確証があった訳じゃないんだけどね。やっぱり、空気が柔らかいものだよ」
 オレがかずのこと、すきだって、空気にまで伝染して伝わってるみたいだ。それはちょっとだけ恥ずかしいかもしれない。だって、一番最初に伝わってほしいのは、他の誰でもない、かず、なのだから。
「追加してもらったカズくんのお花、ハイビスカスにはわたしはあなたを信じます、とか信頼、とかの花言葉があるんだよ」
「つむぎ、すごーい。かずにプレゼントするのにぴったりの花束になった……!」
 お花屋のおねーさんに、オレとかずの色の黄色と黄緑色のリボンで結んでもらったちいさなブーケは、オレの両手にすっぽりと入ってしまいそうなくらいに小さかった。それでも、さんかくの葉っぱをつけて黄色いお花を咲かせたまるで、オレみたいなお花と、かずのお花が一緒になってるのは心の奥がむずむずとして、そわそわが止まらなかった。



「かーずーっ」
「なーに? どしたん?」
 にこにこと、ひどく機嫌が良さそうなすみーは両手を後ろに隠してなにかを持っていた。ストリートアクトのときになんかいいサンカク見つけたのかな? そんなことを思って緩んでいた頬は、ぱっと出てきた花束にビックリして役目を果たしてくれなかった。
「あげるー!」
「えっなにこれ花束!? なんで!?」
 あのね、とサンカクの葉っぱがついたアカシアという花について説明して、ついでに「これはかずのお花! だから、オレたちふたりみたいでしょ?」なんていってへへへ、と笑うのだから、オレは笑顔で受けとるしかなかった。
 黄色のアカシアの花言葉なんて、知らないと思うんだけど、 まあ葉っぱが間違うことなきサンカクなので、それだけで選んだのだろう。たぶん。きっとそうだ。あとすみー黄色すきだし。ほら、ね、うん!
「──で、サンカク葉っぱのお花の花言葉はね、」
 ちょっとまってすみー、それ、わかっててオレにくれたわけ!? それは、つまり──

花束

「うん、そうだよ。えへへ、やっと気が付いた?」