きらきらとやわらかく輝いていた星や夜空はその吐息をひそめ、じわりじわりと灼熱の輝きが世界を満たし始めた。柵にもたれた身体すらも照らされて、行く当てすらないのにどこかへ逃げたくなる。やわらかな輝きはいつだって歓迎してくれているのに、灼熱の輝きはすべてを余すとこなく照らしだして、ひどく残酷だと思った。
 明日が来るなんて、誰も教えてくれなかったのに。
 そんな恨みがましいことを思ったところで、当たり前すぎて教えてくれなんかしないか、と思い直す。ただ今は、その当たり前がひどく憎らしかった。
 かず、と呼びかけられた声がまだ耳の奥に残っている。ひどく嬉しそうな声で、それ以上に幸せに満ち溢れた声だった。
 今日から、そうしてオレにやわらかく呼びかける声の主はここにいなくなる。オレだってそのうち出ていくのだし、今住んでいる彼らだってきっとそうだ。でもそれでも、心の奥はからからと冷たい風が吹き抜けてさむい。臓器をひとつふたつ、どこかへ落としてきてしまったようだった。
 誰しもが、ずっとそばにいられないことなんてわかりきっている。わかっているけれど、理解したくなんかなかった。オレたちの楽園に、ずっとそばにいてほしかった。
 会えなくなるわけではない。きっと頻度ですら、そう大差なく会えるのだろう。それでも、ふとした拍子に、それこそやわらかく輝く夜の空気を一緒に眺めることなんか、ほとんどなくなってしまう。
 トモダチの幸せだ、祝福して当たり前のはずなのに。それなのに、言葉とは裏腹に、まったく喜ばしくなんかなくて、そう思ってしまう自分がひどく滑稽に思えた。
 まるで子供が唯一のおもちゃを取られて駄々をこねているみたいだ、なんて辛辣に自分を評価してみたところで、やっぱり気持ちは変わらなくて。

明日が来るなんて、誰も教えてくれなかったのに

 灼熱の輝きに焼かれて、怪物のようにそのまま灰になって舞ってしまいたくなった。