二人でサンカク探しに出掛けて公園の前を通ったとき、ぽつぽつと雨が降り始めたことに気が付いた。まあ、傘をさすほどではないか、と公園の休憩所のような屋根の下でサンカクを探していたら、いつの間にかざあざあとたてるほどになっている。
「わあ、いつの間にかすごい雨ー。ねこさん、だいじょーぶかなあ」
「うーん、一応屋根あったし、大丈夫だと思うけど」
 サンカクを探している最中にすみーの『オトモダチ』にサンカクの在り処を聴くのは、茶飯事だった。この公園に来る前に会った猫は足が悪く、あまり行動範囲が広くないらしい。それでも、屋根のある、雨風の凌げる場所を陣取っているのだから、力のある猫なのかもしれないな、と思った。
「にゃんこちゃんも大事だけど、オレたちのことも大事だよ! すみー、傘持って……ないよね?」
「うん! かさって、あんまりつかったことない〜」
 たしかに、すみーが傘をさしている姿を見るのは、劇場の往復のときくらい、しかもその傘は寮の共用のもの。個人の傘を持っていないのかな、と思ったけれど、傘を持って出歩かないのだろうな、と思えば納得してしまった。
「じゃーん! 今日は折り畳み傘持ってんだよね。寮まで一緒に入ってこ!」
「かず、すごーい! ありがとー、おじゃましまーす」
 ぽん、とさした折り畳み傘に成人男性二人は少し狭い。でも、雨の中を切り取る同じ空間に二人で入るのは、悪くないと思った。
「ほらすみー、傘のここ、一枚一枚がサンカク!」
「おおー、かず、せいかーい! 雨の日はさんかくも隠れちゃうことがおおいけど、かさならいつでもさんかくだね」
 にこにこと笑うすみーに、そだねん、と笑い返しながら、はたとこれは相合い傘なのではないかと思い至る。相合い傘の女子高生とすれ違ったからだけど。相合い傘だな、仲がいいな、と思ったら、自分たちもだったワケ。
「かず、これってあいあいがさ、だよね」
「えっなんですみーそんなこと知ってるの」
 まさかすみーが相合い傘を知ってるなんて思わなくてびっくりする。思わず目を見開いたオレに、ますみがカントクさんとしてた! とにこにこ笑うすみー。まっすーやばたん!
 なるほど、なんて頷いて、笑いあう。傘で切り取られた雨の中の少し小さな空間は、やわらかなあたたかさにつつまれていた。

相合い傘