嵐と言っていいほどの台風だった。雨と風の音で、部屋の中の音以外は全く聞こえない。がたがたと音を立てる窓を見ながら、この寮は大丈夫だろうか、とふと不安になった。そこまで古くはないはずだけれど、なにせ管理があの支配人だ。少しだけ不安なのは否めない。
「ねえかず、ほかの人の音がきこえなくって、世界にふたりだけみたいだね〜」
 すみーが突然、そんなことを言いながら笑うから、このまま寮が壊れてもいいんじゃないかなんて思い始めた。いや、よくはないんだけど、そんな気分ってことだ。
 ──だって世界にふたりだけみたい、だよ。
「そだね。……そしたらサンカク見つけほーだいかも?」
「! それいい!」
 目を輝かせるすみーに笑いながら、本当はふたりだけじゃない世界に踏み出す。ふたりだけじゃない世界が当たり前に存在していることに、少しだけ嫌気がさした。

世界に、ふたりだけ