煌々ときらめく太陽を反射して、美しく染められた髪が踊る。すぐ上に乗っていたはずの帽子は、悪戯な風に拐われてすでに手の届かない範囲だ。
 この情景、美しく薫り立つ紅茶、そして屋根の上から降ってくる強い視線。実に良い詩興がわきそうなシチュエーションではなかろうか!
 屋根の上から伸ばした黒い影がぱしりと良い音を立てて、黒い帽子を掴む。逆光であることと、そのもの自体が黒いことでまるで一つの生き物のようだ。……っは、蠢くディストーション、煌めく星からの熱烈なヴェーゼ──
「すみー! ありがとー! オレ出掛けなきゃなんだけど、帽子持って降りて来てもらってもいーいー?」
 太陽を反射していた美しく染められた髪を持つ青年が、屋根の上の黒い影へと呼び掛ける。……一成くんと三角くんだ。
 三角くんは「いいよー」と、へらりと笑ったことが明らかにわかるような声色で答えてそのまま壁を走り下りた。身体能力が優れている彼は普段の活動から曲芸のようで、同じように動けるはずの密くんとは活動量が違うようだ。
 三角くんの視線は時折ひどく強く煌めいて、視線の先を焦げ付くさんばかりだ。それは主に、一成くんに向けられる。執着のようで愛着のような、慕情のようで恋情のような、怪物のようで人間のような。
 一成くんはその視線をなんてことのないよう受け止め、そして似たような──そして決して同じではない色をのせた瞳を煌めかせる。それは否定のような肯定であり、拒絶に見せた許容だ。
 ……不思議な関係だと思う。だが、彼らが煌めかせる瞳はワタシの芸術心を刺激してやまない。彼らが彼らなりの関係を築いていくのに他人の介入は必要ないのか、それとも必要なのかは見極める必要があるが、今はただ、この美しい紅茶と、煌めく太陽とともに見守るとしよう。

蠢くディストーション、煌めく星からの熱烈なヴェーゼ

 はっ、詩興がわいた!