重ねた掌がゆるやかに熱を伝え、風が吹いていてほんのりと肌寒いくらいのはずなのに、掌はじわりと汗ばんでいた。緊張からか興奮からか、互いの口数は多くなったかと思えばぴたりと止まり、無言の空間が続き、そしてまたひっきりなしに言葉が飛び交う。だが、言葉が飛び交っている空気も、無言の空気でさえも心地よく、冷たい空気に燦々と降り注ぐ太陽のほのかな熱のようにほっとさせるものだった。
 二人の間には穏やかな時間が流れる。世間から切り離されたような、もし独りでいれば『取り残された』と思ってしまうような隔たり。それでも、その隔たれた先にいるのが二人ならば、それは悪くないと思った。
 どうせ、この時間だって長くは続かない。延々と続いている道がないように、この隔たりも、この時間にも終わりが来る。

重ねた掌

 ――今は、この隔たりの中で、世間から切り離されたふたりぼっちで、ただゆっくりと歩みたいと思った。