ゆるやかに動く喉が、いやにはっきりと目についた。白すぎるわけでも、日に焼けて黒くなっているわけでもない、ごく普通の範囲に入る、ありふれた肌の色。淡い藤色の髪の毛から覘く、金の耳飾りがきらりと陽の光を反射し、うっすらと目を細めた。
 じわりじわりと侵蝕する輝きに瞳を焼かれそうになって、そのままふいと視線を逸らせる。しかし、逸らした先が悪かった。ひまわり色ともやまぶき色ともとれるような強烈なきらめきを放つ瞳につかまって、嗚呼、もう逸らせない。
「にげないでよ」
 じっと見つめる瞳は、逃がす気はまるでない。それに、この瞳につかまってしまったらもう――逃げ道なんか、どこにも残されていない。ここから先は、未知の世界の始まりだ。

嗚呼、もう逸らせない