魅惑の瞳、と銘打たれた劇団宣伝ポスターは、劇団員全員の瞳をこれでもかというくらいに光を取り込んだ状態で撮った写真を切り出して配置して、これまでのどの宣伝ポスターよりも綺羅〱しく出来上がった。光を取り込んだといっても、すごく天気のいい日に外で撮っただけのことだ。もちろん、各々の好きなものをカメラの奥に置くのは忘れていないが。
 演技をしているときとは異なった煌めきが放たれた瞳たちはより一層の輝きを持って、観る人の目を引くこと間違いなしだろう。各組毎ではなく、あえてランダムに配置された瞳は各々の輝きが異なっている様がよく伝わる。
 純粋な楽しみに輝く瞳、悪戯気に煌めく瞳、嬉しさを前面に出した瞳。
 瞳の色だけを持ってきてモザイク画でも作ったら楽しいかもしれない、と少しだけ脱線した思考を引き戻し、質は落ちるが実際の紙に印刷して確認しようと印刷をかけた。一通り眺め、自分の仕事に満足する。これを見せて了承を得れば、宣伝ポスターの仕事は終わるはずだ。
 そこで、つい、と一つの瞳に視線が奪われる。瞳だけになっても自分の視線を奪っていくのだな、と思えば苦笑が漏れるしかなかった。じっとその瞳を見つめても、こちらを見返してくることはない。ないはずなのに、何故だか見られているような気持ちになってようく目を凝らして――そうして見つけてしまった。
 その瞳の中に映り込む、満面の笑みの自分を。
 気が付かなかったならばそのまま提出した。だけれども、気付いてしまったからにはもう直視できないし、このまま提出なんてとんでもない。踵を返してその瞳の中の自分を消すべく、画像処理ソフトを立ち上げるのだった。

至上の煌めき

 自分の笑顔よりも、それを映した輝く瞳の方がいたたまれなかった。