乗り上げて、ふと思う。
 どうしてぼくはこいつを押し倒してるんだろう。ふつう、逆じゃないか?
 その通りで、ぼくは女で、くすのきは男で。
「あ、あすかい?」
 戸惑ったように、目を白黒させているのも当たり前だと思う。でもこうでもしないとわからないんじゃないか、こいつ。
 ぐっと顔を近づけると、ふわりと髪の毛が周りをかこう。そうするとまるで世界に二人だけのようなそんな幸せな気分になる。
 きっとにらみつけるように目に力を込めれば、ひゅっと息と一緒に次に出てくるであろう言葉を飲み込んだ。
 何を言う気だったのかはわからない。
 きっと、降りろだとか重いだとか、そんなことだと思うが、聞いてやらない。

実 力 行 使

そっと瞳を閉じて世界を狭めた。
(鼻へ唇を落とすとへぁ、と変な声が聞こえた)(期待、してた?)