爽やかな秋の空気を肺いっぱいに吸い込んで、ぱちりと瞳を開いた。鮮やかに色付いた頭上の木の葉が、輝く陽をゆらゆらと遮る。
 かさり、と落ち葉を踏みしめる音が届いて、見上げていた視線を落とすと薄花桜の髪がふわりと舞った。鮮やかな暖色に色付いた周囲とは異なった寒色ではあるが、ひどくあたたかさを感じる。
「かず、みてみてさんかくどんぐり〜!」
「おっ、すっげー!」
 ころんと転がるどんぐりは確かにサンカクを象っていて、満面の笑みを浮かべるのにも頷けた。イエーイ、と声をあげてサンカクポーズをとりながら、自撮りして早速とばかりにインステに写真をあげる。
「くもんとてんまにも、お土産持ってかえろー?」
「そだねん!」
 二人は学校で来れなかったので、残りの夏組四人で紅葉狩りだ。比較的綺麗な落ち葉やサンカクのどんぐり、それに変なカタチの落ち葉なんかをお土産に選んで持ち帰る。
 けらけらと二人で笑う林の中は、どこか日常とは切り離されたように感じるけれど、すぐそこに日常は転がっている。カズくん、と呼ぶ声に返事をしてくるりと振り返った。

鮮やかに色付く