かずは、オレのこと「ともだち」だって言ってくれた。オレにとって、初めての友だち。でも、かずの友だちはいっぱいいーっぱいいて、オレはその中の一人でしかない。かずの本当の「はじめてのともだち」は、きっとオレじゃなくて、てんまだった。
 かずが初めて「ほんね」を言おうとしたのは、オレたち夏組みんなに向かってだ。でも、それはてんまが言えっていったからで、オレの言葉じゃない。べつに、それが悪いといいとか、そういうことではなくて、ただ、そういう事実があるのだ。
 かずは、夏組のみんなになら、本音が言える。それが、寮内に、劇団内にだんだんと広がって、つづるとケンカしたこともあったっけ。オレはそれが、うらやましかった。かずが嘘をついていると思ってるとは思わないけれど、それでも他人を優先しちゃうかずだから、かずのことを優先してあげなきゃいけないと思うんだ。
 オレにとっての、「はじめての友だち」なんだもん。それくらいしかできないけど、許してね、かず。

はじめてのともだち