その腕に時計がはまっているのを初めて見た。そもそも、時間という概念を持っているのかも怪しい淡い藤色の髪を持つ三角は、大好きなサンカクの文字盤にベルトまでサンカク柄のそれをはめている。少々(ではないかもしれないが)オシャレにうるさい幸も納得するだろうと思うくらいにはよく似合っていた。
 なんだって突然、と思っていたら、全く同じ時計の色違いを腕にはめた一成が談話室に入ってきてなるほど、と納得する。昨日だか一昨日だか、サンカクばかりの店を見つけたとかで二人で出掛けていったはずだ。お揃いの時計なんて、イマドキカップルでもやらねーだろ、と思えど、この二人ならなんとなく納得しかねない空気がある。
 色が違うだけで随分と雰囲気を変えるその時計は、一成にもよく似合っていた。仲が良いの一言で済ませていいのかはわからないが、特段困ることはないのでいいのだろう。現に今、俺は困っていない。
 手を繋いで談話室から出ていく二人を、臣が仲が良いな、と微笑ましそうに見送る。微笑ましいのか、アレ? 椋は両手を握って目をキラキラさせているし、綴はあからさまに「めんどくせえ」と顔に書いてあった。前言撤回、いちゃつくなら二人だけのときにしろ。アレに巻き込まれたら『めんどくせぇ』の一言じゃすまされないことなんか、俺じゃなくてもわかった。

腕時計