生きにくそうだな、と思わずにはいられない彼の不器用さは、僕のささくれだった心を癒してくれるはずだった。天才はそうやって凡人を見下して生きているのだ、そうやって自分を癒し続けていた僕には、不器用ながらも一所懸命な彼を見ると苛立つ。
 天才は天才らしく才能にあぐらでもかいてろよ、そう思ったところで好きだからの一言で誰よりも努力することをいとわない彼は、そして誰よりも努力することを知っていた。

てんさい