「空気、みたいなものかな」
 そう目を細めていった月島に、苛立ったのは本当だ。アイツにとって俺は居ても居なくても関係ない、その程度の存在だと言われたようなものであり、つまりそれが苛立つということは、俺は少なくともアイツにとってもう少し必要な存在だと思われていたと思っていたということだった。
 そう、俺はアイツにとって少しは必要な存在だと思われていると思っていたし、必要であって欲しいと思っている。それなのに、こともあろうに空気だと、空気。
 くそやろう、と俺の機嫌が一気に悪くなったのに気付いたのかなんなのか、ひどく嬉しそうに笑うアイツに舌打ちを一つ、くれてやった。

 急降下した機嫌は、影山が僕は影山のことを必要としていないことに苛立ったということだ。つまり、影山は僕のことを気にしている。その事実に押さえきれない微笑みがこぼれる。一人だったのなら、声をあげて笑っていたかもしれない。そのくらい、嬉しかったのだ。
 空気、そう、空気だ。多すぎれは息苦しいし、でも無くては死んでしまう。適量が必要な、存在。
 僕にとって影山は、そんな存在だった。もちろん、こんなこと影山に伝わらないとわかった上で言ったのだし、わからなくて一向に構わない。僕がわかっていれば、それでいいのだ、ひとまず今のところは。

空気