「おめでとう」
 一番聞きたくないやつからの寿ぎでぼくは苦さを含まないように苦労しながらありがとうという。思えばこいつにたいしてありがとうなんて使ったことはほとんどない。
 それでもここにこいつを呼んだのはぼくで。何かしらのリアクションを期待していたのかもしれない。
 でもこいつは綺麗に笑って、ぼくを祝う。
 それなら、ぼくはおまえじゃない隣の人と笑おう。

でも本当は、できるならぼくは、おまえの隣でわらいたかった。

(それでもぼくは笑っていよう)(後悔なんか、しない)(したくないのに)