赤銅色の鈴が、どうしてか転がっている。
どうしてこんなところに、とはいっても犯人(と言っていいのかはわからないが)は一人しかいない。
なぜかはわからないが、商売道具を置いて行ってしまったら困っているのではないかと、電話をかければ
「置いておいていい」
の一言だけで切れた。
まあ確かに鈴はこれ一つではないのだから困りはしないのだろうけど、どうしてここにあっていいのか、さっぱりわからない。
組紐に通されている穴の部分をつまんで軽く揺らすと、チリンと澄んだ音が響く。
なんだか、部屋の空気がきれいになったように感じられた。
それは、鈴の影響なのかそれとも”彼女”の影響なのか、わかりはしないがなんだかうれしくなる。
自分以外のものが自分の部屋にあるというだけで落ち着かなかったわりに、この鈴は溶け込んで、それでも存在感があって。
まるで彼女のようだと思う。
そのまま置くのもなんなのでハンカチを出してきて、その上にちょこんとのせて、昔翠さんにもらった鏡の隣に置いた。
それだけでなんだかまるで一緒に部屋にいるようでうれしくなる。
今度来た時に、なんていうかな。

赤銅色の鈴

(置いてある鈴をみて、顔を真っ赤にした彼女は)(抱きしめたくなるほどかわいかった)