「けっこん……?」
頭に入ってこない。こいつは何と言った?
にこにこと笑いながらうん、と無邪気に笑う。
(いくつも年上なのにこの笑顔はなんなんだ、)
どこそこの人で、こんなところがいいんだなどとのろけ始めるのは、どういうことだ、僕は、おまえは、なんだったんだ。
どうして、と聞けば、にこやかな笑顔で、
「だって、飛鳥井、結婚するんでしょう?」
だなんて、なんでおまえが知ってるんだ。
愕然としていれば、少しさみしそうな笑顔で、おじいさんが教えてくれたよ、と、あのくそジジィ…、でもなんで、おまえが結婚なんか。
「だってぼくばっかりひとりじゃさみしいでしょ?」
そう笑うおまえに、後ろめたさなんかなくて。どうしてこうなったんだ、どこからぼくたちの関係が崩れていったのかわからない。

全部が、指先からすり抜けていく。

(形式だけでも結婚したら)(いつまでも一緒に居られると思っていたなんて)(今更、遅い)