くるしそうな、顔をして笑うあいつに、ぼくはどうしようもできない。
なけば、なんて言ったって、女の子の前で泣くなんてできないでしょ、と笑うんだ。
女の子、っていったって、ぼくはおまえの恋人、なのに。
つらそうなときにつらさを緩和できないなんて、そんなの恋人失格だ。
そう伝えれば、そんなことないよ、つらいのは鈴ちゃんといるだけで和らぐんだよ、というけれど。
そんなこと気休めだろう。
どう考えたってぼくといたら無理して笑うじゃないか。
安芸和宏と一緒なら、泣くんだろう。
溝口や、有田とだったら、泣き言をいうんだろう。
ぼくには頼ってなんか、くれないくせに。
ぐちぐちと、文句をいえば、(どっちが泣きたいのかわからなくなってきたなんて!)ぎゅっと目をつぶって、笑いながら。
苦しそうに、笑いながら。
「泣いてもいいのかな。」
なんて、そういうもんだから、泣いていいに、決まってるだととぼくが先に、泣いてしまって、結局二人で泣くだなんて、ぼくたちはなんて滑稽なんだ。

泣いてもいいのかな。

(それでもその日の涙が)(ぼくとあいつの距離を少しだけ縮めたことは、たしか)