こいつは、ぼくを莫迦にしてるんじゃないだろうか。
「ぼくがそう簡単に死ぬとでも?」
「いやそういうわけじゃないけど、」
「じゃあなんだ、へまをするってことか」
「そうじゃなくて!」
イライラと言えば、強く言い返される。
ぼくはそう簡単に死ぬ気はないし、殺される気もない。
「心配、なんだよ…」
だからそれはぼくがへまするってことじゃないのか。
その言葉を飲み込んだのは、あいつがいまにも泣きそうな顔だったからだ、そうじゃなきゃ、飲み込みなんかしない。
泣きそうな顔で、泣きそうな声で。
「ぼくの大切な人は…なくなっていきそうで、こわいんだ…」
こいつが臆病なのは、人間関係をうまく作らないのは、親しい人が死んでからだと聞いたことがある。
「ぼくは、そんなにたよりないか」
静かな声で言えば、ぎゅっと目をつむったまま、
「たよりなくは…ないよ。こわいだけだ」
絞り出すようにそういった。
その声は、泣きそうを通り越してもう泣いている声だった。
ぼくがどう頑張ったところで、この不安は解消されることはないのだろう、ぼくが死ぬその日まで。
「おまえがしぬまで、えいえんに、すき」
ぼそりといえば、
「え、」
と間抜けな声。
「だからぼくは、おまえがしんでも、ぼくがしんでも、すきなことには変わりない、って言ったんだ」
キラキラと光る瞳を見開き、ぼくをみるあいつは、阿呆づらだな、とおもう。
不安なんか、解消できないなら、いっそなくすのが怖くなるくらい好きでいよう。
こいつが不安に駆られるたびに、すきだと言おう。
ぼくが、守ってやればいいんだ、こんなに弱いこいつを。

えいえんに、すき

(そうじゃないんだけどなぁ、とわらうこいつに)(そっと鈴を鳴らした)(鎮魂だけじゃなくて心も落ちつけられたらいいのに)