見たことのないくらい怖い顔をして、ズボンを脱げといわれたからぎょっとした。
羞恥で顔が真っ赤に染まると、あいつは困ったような顔をしてすごーく短いズボンか、スカートならいいよといってぼくを隣の部屋へ押し込めた。
その言葉で、知られていることに気が付いた。
うまく隠せたと思ってたんだけどな。
そう思いながら、ここのところずっとお世話になっていた長いズボンを脱ぐ。
そうして、自分の左足を見下ろして、その場に座り込んだ。
醜くて、汚くて、どうしようもないくらい自分が馬鹿だと思った。
知られたくなくて、ずっと隠していたのに。
悔しくて涙がうかぶ。
「鈴ちゃん?」
隣の部屋から声がかかって、あわてて下をはこうと立ち上がりかけるが、左足にうまく力が入らずにそのまま前につんのめり、ゴンッ、っと頭を打ち付けた。
その音に
「大丈夫!?」
とあいつは断りもなく入ってきて、恥ずかしい姿をさらすことになったのだけど。
あいつは一瞬顔を赤らめたけど、すぐにぼくの左足をみて、すぐに顔をしかめた。
「やっぱり……」
そういって、すっとぼくの左足を手に取る。
悔しいのと、恥ずかしいのとがないまぜになって、ぼくの顔は赤く熱を放った。
(気付かないでほしかった)
でももうここまで来たら遅い。
失態なんか、見せたくなかった。
こいつに、自分のせいで怪我したなんて、思われたくなかった。
だから隠していたのに、こいつはやすやすと気付いて怒って。
大事にされているとわかるけれど、ぼくがどんどんぼくでなくなるように弱くなっていくかがして、ひどくこわいかったのだ。
ぼくのために怪我したってうれしくない、っていわれても、ぼくはおまえを守りたかった。
ぼくは頼られたいんだ、ぼくであるために。

(気付かないでほしかった)

(女の子、なんて捨ててきたはずなのに)(大切にされるほどこわくなっていく)(自分が本当に女の子だったのか、)(わからなくなる)