触れあうだけの、重ね合わせるだけのキスが、すきだ。
優しくふれあったその場所から、ふんわりと全身に甘苦い感覚が広がっていって、ああ、こいつが好きだなぁ、と思う。
でも、むずむずと唇が動き出して、 ぼくの唇がまるで食べられてしまうんじゃないかと思えるほど食まれると、なんだか苦い感覚が胸の辺りに広がる。
瞳を閉じていると何がなんだかわからなくなるし、うっすらと瞼を押し上げれば妙に色気のある閉じられた瞳と、やけに眩しい前髪が目に入るしで余計に恥ずかしくなる。
そうして耐えられなくなって目を閉じようとすればパチリと瞳が現れて目があってしまう。
その瞬間の、なんともいえない視線と、熱と、空気に、ぼくはどこかがおかしくなってしまうんじゃないかと感じるのだ。
だからぼくは、

触れあうだけのキスが、好き。

(いつのまにか、触れあうだけでは物足りなくなるなんて)(そんな莫迦な)