手が触れるくらいの距離で横をあるく月子の手を取れないのは、俺と月子の間に仲間以上の意味がないから。
いつだってぎゅってしたり、手をつないだり、なでなでしてもらったりしているけれど、触れてもいいのか戸惑うことだってある。
月子は嫌がらない? 困らない? そんなことが頭をよぎるともうだめだ。
どうしたって心配になってしまう。
俺はどうしてこんなことを考えているのだろう。
いつものように手を取って、ぬははって笑えば月子だってきっとしょうがないなぁって感じで笑ってぎゅっと握り返してくれるってわかってるのに、そうできない。
俺は弱いな、そう思ってすこし苦く笑えば月子が不思議そうにどうしたの?としたから覗き込む。
あわてて笑顔を張り付けて、なんでもない! といえばそう? と不思議そうに首をかしげる。
月子はたまに鋭くて俺の心の弱さがいつかばれてしまいそうだと思うと少し怖い。
前のほうからぬいぬいとそらそらが早く来いとせかしているのに気付いた月子が俺の手をためらいなくとって翼くんはやくいこう、と引っ張る。
それだけでなんだか泣きたくなるくらいうれしくなって、うぬ、と今度こそしっかりと笑って月子と一緒に駆けだした。

手が触れるくらい