どんなに想ったところで伝わらない、届かない、そんなことはわかっていた。
どれだけ想ったって、実際に伝えない限り、いや伝えても自分が思っている通りに伝わるかどうかなんてわからない。
でも伝えないと始まらないことなんて、わかっていた。いや、わかっていたつもりだった。
いま、翼くんのことを想って、電話してほしいな、とか、会いたいな、とか思ってもどうしようもない。
同じ想いをしていてくれたらうれしいけれど、やっぱり伝えないとわからない。
翼くんはいま、何を想ってる?
…一度電話がつながらなかっただけでこれだ。
またつながらなかったと思うとかけ直せない。
翼くんだって忙しいだろうし、そう思ってもなんだかそわそわする。
一言、時間が空いたら電話してほしいってメールでも留守電にでも入れればいいのに、それすらもできない。
だめだなぁ、なんて思ってはぁと本日何度目かもわからない溜息。
恋愛初心者の私には、遠距離のこのさみしさをどうやって埋めたらいいのか、どうやって伝えたらいいのか、さっぱりわからなかった。

アメリカに来てからというもの、どうやって愛情表現をしていいか困っていた。
電話をしても、手紙で伝えても、想っていることの半分も伝えられてないと自分でわかってしまう。
会えなくて、でもそう簡単には会えなくて。
そうやって月子への想いを募らせて募らせて、もうどうやって伝えていいか、どうやったら伝わるかわからなくなってしまった。
ぼうっと月子のことを考えながら課題に手こずっていた。
梓にぼうっとするな、と怒られても全く頭に入ってこなくて、結局梓は自分でやりなよと言って出て行ってしまった。
ぬわぁ、と声に出して、ベッドに後ろから倒れこむ。
課題も研究も発明も、手に付かない。
月子にすぐに会える発明品とか、月子に俺の想いをぜーんぶ届けられる発明品とか、そんなの作ろうかなぁ。
そう思うほどに自分の中に月子への想いがどんどんあふれて、どうしていいかわからない。
今なら日本はまだ夜かな、そう思って電話を手に取れば、着信ありの文字。
月子からだった。
あわてて詳細を見れば、1時間前で。
もう寝ちゃったかな、何の用事だった?
少し焦りを感じながら電話を掛け直す。
数コールの後、も、もしもし?という月子の声が聞こえてきて、ふと安心する。

どんなに想ったところで伝わらない、届かない

(だからいっぱいいっぱい伝えるよ)(君をだーぁいすきって気持ち!)
(翼くんからの電話にそわそわしてなかなか取れなくって)(とってすぐに大好きといわれてほわんと幸せになった)