翼くんが笑うと、世界がパァっと明るくなったように、輝いて見える。
それはきっと私が翼くんのことを好きだからではなくて。
翼くんが本来持つ周りへの輝きがそうさせているのだと思う。
だから、翼くんの笑顔は太陽だ。
太陽みたいなぽかぽかの笑顔は周りを照らして、周りごと笑顔にする。

たとえば、翼くんの発明品が成功して、一樹会長や颯斗くんにほめてもらった時。
まわりが明るくなって、しょうがないな、って感じで笑ってた二人だっていつの間にか楽しそうに笑ってるんだ。
翼くんが楽しそうに、嬉しそうに、幸せそうに笑ってると、生徒会のみんなは幸せだって言うようにキラキラ輝く。

たとえば、翼くんが何か梓くんに褒めてもらった時。
珍しそうに笑ってた梓くんが、翼くんがへにゃりと笑うと嬉しそうに大事なもののように笑うのだ。
その瞬間、世界は煌めく。
梓くんは翼くんのいとこで、翼くんがひとりになってしまわなかった、唯一の人。
彼らは年相応にはしゃいで、怒って、笑って、二人分のキラキラが周りを明るく照らす。
翼くんが幸せを感じられて、それにさみしさを感じていないってわかると、梓くんは自分のことのように幸せそうに笑ってくれるのだ。

たとえば、翼くんの発明品が失敗して、翼くんがけがをした時。
保健室に駆け込んで、星月先生に診てもらって、もうちょっとセーブしろと怒られて、しゅんとなる。
翼くんがしゅんとなると、みんな心がぎゅっとなるのかわからない(少なくとも私はなる)が、すこし励ますように言葉をかける。
そうすると少し困ったように笑う翼くんを元気づけたくて、みんな笑うんだ。
陽日先生は笑う。星月先生だって笑う。水嶋先生だって、すこし困ったみたいに笑うんだ。
そんな中で、みんなの笑顔で元気づけられた翼くんはきれいにキラキラ笑う。

たとえば、翼くんが錫也のお菓子を食べて、おいしかった時。
(錫也のお菓子がまずいことはないけれど、甘いと翼くんはあまり好きじゃないみたい。)
翼くんがおいしいと笑えば、錫也はにこにこと笑ってもっと食べる?と勧める。
最初は仏頂面だった哉太だっていつの間にか笑っていて、錫也のお菓子はうまいんだと誇らしそう。
羊くんも錫也のお菓子が美味しくないなんてあるわけがないだろ!と笑う。
みんなみんな笑って、翼くんはうぬと満足げに笑って、もうきらきらと輝く。

たとえば、翼くんが弓道部に遊びに来た時。
涼しくなる発明品なんか持ってきて、梓くんは渋い顔をしていたけど、ちゃんと動きだしたらみんなほっとしたように笑った。
そのほっとが気に食わないように食ってかかれば、梓くんになだめられて、みんなが優しそうな笑顔で見守っている。
キラキラ、輝いて、空に輝く太陽にも負けないくらい輝いた笑顔を咲かせた。

そんな周りをキラキラにする翼くんの笑顔は、まるで太陽だ。
キラキラ輝いて、周りはそれを反射するように笑う。
私だって、翼くんが笑ってるとそれだけでどうしたって大丈夫だって思えて、笑えるのだから。
翼くんが笑っていれば幸せになれるのだろう。
でも、それでも。
太陽のように、みんなを照らすのではなく、私だけを照らしてほしいと願うのは私のわがままですか。
太陽じゃなくて、ひまわりのように私のそばで、私に向かって笑っていてほしい。

ひまわりのように笑って

(そんなこと言えもしないのに)(願うだけなんて、)