みんなが、よそよそしい。
普段はいつもと同じだけど、ふとした瞬間に目配せしあったり、月子もそらそらも、困ったように笑いながら俺を遠ざける。
なにか、してしまっただろうか。
みんなに、嫌われてしまっただろうか。
そんなことを考えてしまうともうだめだった。
部屋に引きこもって、ひたすら発明にせいを出す以外になにも考えないでいられる方法なんて知らない。
そう思っていたのに、発明だって俺の気をそらせないだなんで考えたこともなかった。
少しでも間が空けば思考は飛ばされて手元が狂う、爆発する、気分が下がる。
一人でいれば良いと、一人が気楽だと思っていたはずなのに、大切なものがいつの間にか増えていた。
捨てられるのがこわいから、捨てかたがわからないから、拾わないようにしていたのにいつの間にか腕の中で輝いて煌めいて、俺に存在を主張する。
関係の修復なんて方法しらない。
捨てるか、拾うか、捨てられるか、それしかなかったのだから。
目の前が歪んで、揺らめいて、そのままベッドへとダイブした。

なにかがぐうぐうと動いてゆっくりと瞳を開けば、携帯が着信を示してキラキラと光っていた。
頭がうまく働かないまま表示を見ればそれは彼女で。
ぐっと詰まった息を吐き出して、ゆっくりとボタンに指を伸ばした。
とる前に切れて欲しいような、いつまでもなり続いて欲しいような、そんな気分。
「……もしもし、」
「あっ翼くん? あのね、いまから出てこれる?」
寮の下にいるんだけど、と続く声にどうしたのだろうかとぼんやり思った。
今からいく、とだけ伝えて電話を切る。
ぼんやりと切れた携帯を眺めれば、不在着信が五件。
ぬいぬいと、彼女と、そらそらから来ていて、みんなでいるのだろうかと思った。
俺だけ、一緒じゃない。
ぐるぐるとする思いをはねのけて、上着を羽織って寮からでた。

寮の扉を開いた瞬間、パンっと破裂音が響いて目の前を色とりどりの紙が舞った。
「「「誕生日おめでとう翼!」くん!」」
三人が一斉に口を開いて、おめでとうとーー、俺の誕生日を、祝ってくれている?
そうか、今日は二月三日、俺の誕生日だ。
じわじわと嬉しさが、切なさが、涙が込み上げてくる。
ありがとう、とそう言った声は、掠れてほとんど声にならなかった。
ぬいぬいが、俺のかぶっていたフードをとると、乱暴に頭をなでる。
痛いのだ、そう言ったっておとなしく父ちゃんに甘えとけ、なんていって豪快に笑うのだ。

溢れそうな涙は、もう、悲しくなんかなかった。

翼くん、お誕生日おめでとう。
翼くんが産まれてきてくれて、本当に嬉しい。