「お前は私がいればいいんだ。私だけがいれば……」
 ええそうね、と微笑む月子を抱き寄せる。どうしてこんなに遠回りしてしまったのだろうか。彼女を手に入れることなんて、こんなに簡単だったのに。
 月子は私が好きだと言ったあと、変わった。私はずっと、彼女を手に入れたいと思っていた。それは、エルヴィラに傷付けられたプライドの回復が目的のようになっていたが、いつの頃からかエルヴィラのかわりではなく、彼女がほしいと願っていたのだ。彼女は鳥籠の中のお姫様であり、外の汚らわしいものなど何も知らずに育ち、美しいまでの白さを保っていた。ロベイラ種だからだとか、そういったことは問題ではない。
 彼女の兄が、彼女を大切に思うあまりに監禁していたといっても間違いではない。その気持ちは、痛いほどわかる。
 大切だからこそ、外の汚さなど知らずに生きてほしい。大切だからこそ、誰にも見せたくないほどに閉じ込めてしまいたい。
 月子も懲りたのか、外に出たいなどと言うことはなくなったが、外の美しい場所はこれからも教えて行きたいとおもう。


外界