やっと気付いたこの気持ちは、彼女が好きだって気持ちで。
これを愛とか恋とか呼ぶのだろうか。
彼女は俺じゃない人の隣で、幸せそうに笑っていて俺はぐっとこころがつかまれたようにくるしくなる。
彼女が笑っていれば幸せだとそう思っていたのに、俺じゃない誰かに笑いかける彼女を見るとぐるぐると渦巻く痛みがある。
どうして、なんで、そんな疑問はとっくの昔に全部捨ててしまった。
そんなことを考えたってどうしようもない、そう気づいたから。
でも彼女が幸せなら、とそう思って痛みを押し込める。
幸せになってくれないと、そう思って心臓のあたりをぎゅっとにぎった。
君を好きなこの気持ちは、もう少しだけ持っていさせて。
君に笑いかけられてふわっと幸せを感じることのこのあったかい気持ちは、もう少しだけ、お願い。
あとちょっとしたら、ちゃんと捨てるよ。
俺はまだ捨てることに勇気がいるんだ。
ちゃんと捨てられたら。
そうしたら君と、俺じゃない彼の、二人の幸せを願うよ。
この胸の痛みも、もう少しだけ抱えていたい。

「この痛みさえも愛と呼ぶのですか」

(それなら痛くても、つらくない)