「ジャーファルさま、私はそんなに長く生きられないのです」
 そう悲痛な顔で告げるウェルテに、私はどう反応したらいいのか迷う。本当はすべて知っていた、なんて彼女が聞いたらどんな反応をするか。
 彼女の一族は、短命だ。
 皆が皆短命なわけではなく、淡い紫色の瞳がその命のはかなさを示している。彼女の瞳を初めてみたとき、彼女の処理の能力の高さを垣間見たとき、彼女の頭の良さが露呈したとき、私はどんどんと確信を強めていったのだ。
 調べていって、絶望しか出てこない彼女の一族の話は、シンドリアの文献にも多少は存在していた。そのどれもが、一瞬の強い輝きだけを残して消えている。
 彼女も、その一途をたどるのかもしれない、でも、辿らないのかもしれない。人間の命なんて、どうあがいたところで有限なのだ、多少短かろうが、長かろうが、さしたる違いはないだろう。
 彼女に、いったいなんと言おうかと、改めてウェルテに向かい合う。

本当はすべてを知っていた

(私のそばにいるのに)(長いか短いかなんて関係ない)