「最近、すれ違ってばかりですねぇ」
 ジャーファルさまがぼそりといった言葉に、確かに、と頷いた。同じ部屋で仕事をしているはずなのに、どうしてかあっちでジャーファルさまが呼ばれて帰ってきたかと思えばこっちで私がよばれ、帰ってきたかと思えばジャーファルさまが……という繰り返しだ。
 ここのところは執務室で一緒に仕事をしている時間なんてほとんどないに違いない。一緒に仕事をしている時間よりもたぶん、外ですれ違った瞬間を重ねたほうが多いのではないかという疑問すら湧いてくる。
 忙しさは嫌いではないし、忙しければ忙しいだけの理由があって、仕事のやりがいだって上がる。それでも、ジャーファルさまと一緒に仕事ができないと、少しだけ。ほんの少しだけやる気が下がってしまうのも仕方がないと思わなくもない。
 ただ、すれ違った瞬間の、ほんの一瞬に、ジャーファルさまがこちらをみて、微笑んでくれるものだから――どれだけでも頑張れる気がしてくるのもまた事実だ。

すれ違い一週間

(ウェルテ、)(と呼びかけてくれるその声が恋しくて)