んんんんんん……、これはいったいどういうことか。 混乱した頭で私はもう一度目を閉じた。これは夢だ、夢……。
もう一度そうっと開いた瞳は、先ほどと寸分たがわず同じ光景を映した。
(なんで目の前にジャーファルさまがいらっしゃるの……!?)
そう、目の前にはジャーファルさまの寝顔があって――まったく意味が解らない。昨日の夜は普通に寝床についたはず、だ。
昨日のことを思い出そうとうんうんうなってみるが、さして変わった出来事があったようには思えない。視線を泳がせているうちにジャーファルさまの寝顔が目に入った。
あ、ジャーファルさままつ毛も銀色なんだ、とぼうっと眺めてしまう。どれくらい凝視していたのか、ジャーファルさまがゆるゆると瞼を持ち上げた。
柔らかい光が瞳を照らして、そこに私が映るのを見ると気恥ずかしく感じて――って、そもそもなんでここにジャーファルさまが、という疑問が晴れていない。
まじまじとジャーファルさまの寝顔を見ている場合じゃなかった。
「おは、よう……」
ふにゃりとあいさつするジャーファルさまがかわいらしくて、思わずおはようございます、とあいさつを返す。と、だからそんな場合ではなくて……。
とあたふたしていたら、急にがばりと起き上ったジャーファルさまが、目を白黒させてウェルテ……!?と叫んだ。あわてたように私の肩をつかんでゆするが、私にも何が何だかわからないので何も言えない。
ええっと、なんででしょうか……と私も疑問であることを伝えると、はたと行動を止めて何もしてませんよね!? と聞かれる。たぶん、と答えるが、お互いなにも覚えていないわけだし、特に何もなかったはずだ。
きょろきょろと周りを見渡して、私の部屋に変わりない。ジャーファルさまが迷い込んだ? とか? そんな馬鹿な……と思っても、それ以外の選択肢はあり得ないだろう。
なぜかお互いベッドの上に正座して、昨夜のことを思い出しながら話すことになっていた。
「私はいつものようにいつもの時間にベッドに入ったのですが、」
と私はいつもと変わらなかったことをジャーファルさまに伝える。
「私は……そうです、珍しくお酒を飲んで――あっ」
思い出したようにわなわなと震えだしたジャーファルさまは、本当にすいませんでした、寝ていただけだと思います、というなり駆け出して行ってしまった。
朝の珍事
(シン!シャルルカン!)(ジャーファルさまの怒鳴り声がこの部屋まで響いてくる)
(――それにしても、)(良いものを見た気がする)
――あなたたち……ウェルテに迷惑をかけるなとあれほど……!!
――いやぁほら酔ってたし、変な部屋に入れるよりはいいだろう?
――よくありません! まったく、
――なんかありましたかジャーファルさん!
――ありませんよ!
(チョップをかまされたシャルルカンとシンの姿が見られたそうな)
(全員で酔っ払っててシンとシャルがにやにやとここウェルテの部屋だよなーと半分寝てるジャーファルさんを突っ込んだというオチでした)