「ぜひご一緒に、」
「まだ仕事がありますから、」
 そういって眉根を寄せたジャーファルさまは、微苦笑を浮かべてでは、と女官の前からさらりと姿を消した。最近、このような場面を多く目にする、気がする。女官や侍女に声をかけられるジャーファルさまはいつだって困ったように笑っているだけだ。
 ジャーファルさまは仕事を多く抱えていることが多く、手に書類をたくさん持っている時を狙わずにいればいいものを、と思う反面、そのままでいいと思っている自分がいる。近頃自分の思考がうまくトレスできずに悩むことがおおい、特にジャーファルさまに関することで。
 思ったことの結論や直結した行動、感情の根源など、どうしてそうなるのかがさっぱりわからない。とうとう壊れる前兆か、と思わなくもないが、意識があるのがおかしいのかもしれない。
 自分の思考が正しいのか、正しくないのかもさっぱりわからなくて――結局どうしようもなくなる。

前兆か、否か

(ぼうっとしていることが多くなるなんて、)(本当に壊れ始めた、?)