伸ばした手も、その指先も、また明日と交わす声も、すべてが瞼の裏によみがえる。掴めなかったその手も、触れられなかったその指先も、返せなかったその言葉の先も、すべてがとけていった。
 額に触れていたはずの赤い石は、"何か"を含んで紅く、紅くなっている、のが目に入る。腕が上がらない、視界が紅く染まっていてなにかが違うと訴えていた。
 喉に何かが張り付いたようにひゅうとした音しか出ない。なにが、どう、間違ったのか、自分には全く分からなかった。

何かが違う

(指先から抜けていく、)(これは、)