柔らかくほほえむその姿には、どうしてか胸が締め付けられる。この国のことを愛してくれている、そう感じるのがひどく嬉しかったはずなのにいつのまにか心苦しさを覚え始めたのはいつの頃だったか。
 あいしてる、だなんて陳腐な言葉がいつからこんなにも苦しく響くようになったのだろう。陳腐でつかいふるされているからこそ美しいのだろうか。
 自分の思考がうまくまとまらないことが、こんな些細なことで起こるとは思わなかった。こんなに他を排除した愛が存在することは知っていたが、自分のなかにまで存在していただなんて知らなかった。
 彼女が、ウェルテがシンドリアを想えば想うほど、自分の中の自分でない部分が苦しいと悔しいと叫びを上げるのを、どこか別の場所で冷静に見つめている私がいる。冷静な部分すらなくなってしまったら、私はいったいどうなってしまうのだろうか、少しだけ怖く感じた。

ぐちゃぐちゃなあいしてる

(私の前で笑う彼女が)(ひどく美しくて、)