なにができるのか、なにがしたいのか、なにをすればいいのか、すべてが曖昧でひどくぼんやりしている。なんにせよ時間は有限で、私にとってその言葉は他の人よりも大きな効力を持っていた。
 好きだと、一人にしたくないと言われることだってなかったわけではない。それでも結局は離れていくのだ、私のこの力のせいで。
 そんなことをこぼしたのはいつのことだったか、ジャーファルさまはひどく苦虫を噛み潰したような顔をしたのだった。あのときにはなにか言ってはいけないことをいってしまったのかとあせったものだが、いまやっと理由が見える。
 曇っていた空が急に晴れ渡ったような、そんな気持ちだ。
「好きです、ウェルテ」
 その一言が風となって、雲を晴らし太陽を輝かせる。なにを迷っていたのだろうか、そうだ、私はこの人についていくと決めたではないか。
 せっかく晴れ渡った視界が、ゆっくりとぼやけていく。

私もです

(へにゃりと歪んだジャーファルさまに、)(小さく答えた)