ジャーファルさまはお仕事ができて、それでいて八神将を務めてらっしゃらるだけあってお強くて、シンドリアのために尽くしてくださっている上にお優しいときている。そんなジャーファルさまは、女官の間……だけとは言わず、一般の女性にも人気があり、シンドバッド王ほどではないにしろあの方にけそうする人は多い。
 でも、ジャーファルさまに想いを告げることもなく淡々と想っているだけの人が大多数を占めるのは、ジャーファルさまの心が開かれている気がしないからだろう。ジャーファルさまの冷たい目は、私たちが本当に仲間なのか疑っているから。私たちには、その目を暖めることすらできない、そう思っていた。

 そんなジャーファルさまの目が、暖かくなることが増えた。これまではシンドバッド王や八人将の前でしか緩まなかった瞳が、ふとした瞬間に緩むのだ。
 柔らかい表情に、柔らかい声、暖かな瞳、そんなジャーファルさまなんて、知らない知らない知らない知らない。
それはきっと、ジャーファルさまの部下がさせているのだろうと専らの噂であり、私たち女官の間では入れ替わり立ち替わり見に行くことが最近のブームである。部下なのだから仕事をしていることが殆どで、そんな瞬間を覗けることなんてないのにそれでも私たちが足を運ぶのは、ふとゆるんだジャーファルさまが見られるからだろうか。
 お二人でお食事をとってらっしゃることもあるし、うまくすれば──、というものだ。そんなお二人は初々しい恋人同士のようにも、熟年の夫婦にも見えてくるのだから不思議である。互いが互いを優しい瞳で見やり、視線が合ってしまえば慌てて伏せるのだから可愛らしいものだ。

誰かから見たふたり

 それなのに。どうしてこんなに心がざわつくのだろうか。よかったと思えるはずなのに、喜ばしいことのはずなのに。どうしてこんなに。