「どうも私の尊敬する人って、短命というか、私と出会ってからすぐに亡くなってしまうんですよねぇ」
尊敬する人の話になったときに、ぽつりそんな言葉を漏らしてしまった。深い意味は、ない、はずだ。
「私がすぐに死ぬとでも?」
にっこりと擬音がつくほどにきれいに笑ったジャーファルさまが、私のほうを見ていった。つい、目をみはってしまうが、ごまかすように微笑んでから、私は悠然と見えるように言い返す。
「あらジャーファルさま、私がいつ尊敬しているとお伝えいたしました?」
「ウェルテは私のことを尊敬していないのですか、残念です」
そう微笑むジャーファルさまに、つきんと心が悲鳴を上げた。
尊敬するあなたに。
(尊敬していると伝えて、)(すぐに亡くなってしまったら、こわい)