わくわくとした瞳で俺の手元を見つめてくる。こうやって見つめて俺の作るものに、揶揄のまじった視線ではなく、純粋に発明を楽しむ視線を向けてくれるのは初めてかもしれない、とそう思うと、なんだか手元がおぼつかなくなる。
 こういったものが好きなのだと、その子は言った。そうして、発明品が失敗して爆発したり、暴走したりすると、真剣な顔でどこがおかしいのか考えてぶつぶつ言っている。
 その単語をすべて拾えるわけではないけど、いくつか拾った単語は俺には思いもよらない言葉で、びっくりしてまた手元が狂う。そこから? そこに着目するの? そう思って考えてみれば確かに面白い観点で、すごいなぁと思う。
 そうして本日五度目の爆発。いつもより少々大きめなその爆発は、その子の前髪を若干焦がし、鼻の頭に煤が付いた。
「ご、ごめんちゃい! ……大丈夫?」
 窺うように、恐る恐る大丈夫かと問えば、ぱちくり目を瞬かせて、へらりと大丈夫ですよ、と笑った。そのとき、ほっとしたと同時に、この子は俺を受け入れてくれるのだろうか、とそう思ってかぶりを振る。
 大切なものを拾うのはこわい。
「先輩、ほほに煤が付いてますよ、」
 その子は俺のほほに手を伸ばして、ごしごしとこすって、取れました、と笑った。笑う彼女をみて、ああいつの間にか手の中に、拾ってしまうんだろうと、なぜだか確信してしまった。
「そっちこそ、鼻の頭についてるのだ〜」
 そういって笑って鼻の頭をカーディガンの袖でこすってあげれば、ありがとうございます、と恥ずかしそうに笑う。そうやってたくさんの爆発と、少しの会話を終えて、俺はこの子がだいぶ気に入っていた。
 この前月子に教えてもらった「星咲智里」という名前を思い出す。なんと呼んだらいいだろうか、そう考えていれば、翼くん? というこわ〜いこわ〜い声が。
「そらそら……? え、ちょっとまっ……!!」
「問答無用です」
 ぎぃぃぃぃと黒板キーキーの刑が。とっさに彼女をみると目をまん丸くさせて、あ、やっぱりふさいでない。そう思えば自分の耳をふさぐよりも先に彼女の耳をぎゅっとふさいで、ギュッと目を閉じて耐える。終わると思わずその場にへたり込むけど、彼女は大丈夫だろうか。
 しばらくは気持ち悪いし、耳がおかしくなるのですこしわからない。彼女はそらそらと少し会話をして(そらそらが申し訳なさそうだったからきっとぬいぬいのときと同じ気分だったんだろう)、こちらへ来る。
「ぬぅ……大丈夫か?」
「はい、大丈夫です!」
 大丈夫だと言った後、笑顔でありがとうございますといった彼女に、とてもほっとした。ぬいぬいと違って小さくて頼りなさげな彼女は、それでもぬいぬいと似たような大きな笑顔を見せてくれた。
 なんだか嬉しくなって、次の発明をするのに、一緒にいてほしくなった。
「ちぃ! 次の…」
 きょとん、として見つめているが、うぬぬ? そらそらも、月子も、きょとんとしあと、ちぃって星咲さんのこと? と尋ねた。
 うぬ、と頷けば、月子はずるーい私もちぃちゃんって呼ぶ! と彼女のほうへとかけていった。だから、俺が発明するんだってば!!

小さな恐れと大きな身体

(ちぃ、ちぃ)(なんだか名前がしっくりくる)