ねぇねぇ、ちゅーしよー? ちゅー!
 そう言って笑う先輩は、無邪気な笑みを浮かべるときと、色気のある笑みを浮かべる二種類がある。

【1:無邪気な笑みを浮かべるとき】
 単に、さみしいときとか、私をからかいたいときに浮かべる。
 人がいるときにキスしよう、と言ったら十中八九こっちの笑みを浮かべてる。

【2:色気のある笑みを浮かべるとき】
 いわゆる発情しているとき、でもたまにからかう時にこうやって笑うから困る。
 この笑顔からは逃げられない気がして非常に怖い。

「うぬ?何を考えてるのだ?」
「いえ、少し情報を整理していただけです」
 そうやって考えていれば先輩から声をかけられて、少しびっくりする。ああこんなこと考えてるとばれたら怖いので、黙ることにする。先輩は、ぬはは、とわらって目を細めて、「………キスしていい?」ときいた。この笑みは上記に分類されない。
 はい、と頷けばへにゃっと笑ってくれて、キスをしてくれて――、

 ああそうか、うぬぼれでなければこの笑顔は「愛しい」って笑顔だ。私もたぶん、浮かべている類の。

先輩は型にはめても面白くない

(先輩、だーいすきです、)(笑ってほしい)