いそいそと何か作っているのはいつものこととして、どうして隠すのだろうか? 翼さんに聞いても内緒だと言って教えてくれない。
 せっかくの連休なのに、翼さんはずっとラボにこもりっぱなしで、私に立ち入りを禁じてくれたおかげですることがない。とりあえず夕飯の支度、としてみたけれど、いくら手の込んだ料理を作ろうと、もう朝からずっとでいい加減終わってしまった。
 どうしようかと思えば、翼さんがいいよ、とラボから呼びかける。なんだか待っていたみたいで癪なのでちょっと待ってください、と声をかけてゆっくりと行く。
 そうすれば翼さんはすべてわかったような顔をして笑っていて、なんだかくやしい。
「みて、」
 そう言って示したのは大きな笹で、え、と戸惑ったように言えば、ぎゅっと抱きよせられて、翼さんは今日は七夕だよ、と囁いた。ほらと短冊を渡されて、よくよく笹を見れば、笹は本物で、
「これどうしたんですか?」
「このあいだ、ぬいぬいが来てただろ? その時に持ってきてもらった!」
 ああ、と思えば帰宅したときに不知火先輩が来ていて、妙に挙動不審だったのはこれを隠すためだったのかと日越しに納得した。
 ベランダに飾るぞー! と元気のいい翼さんに、少し待ってもらって、短冊を書き終えてしまう。笹にはもうすでにいろんな飾りが飾ってあって。
「翼さん、」
「ん?」
 なんだかくやしいので、腕を引っ張って、耳元で言う。
「来年は私にも飾り付け、させてください」
 きょとん、としたあと、うぬときれいに笑った翼さんはぎゅっと私を抱き寄せて、こめかみにひとつ、キスを落とした。

笹の葉さらさら

(一緒がいいなんて)
(驚かせたかったけど)(一緒に飾ったらよかったかな、なんて)