「……んっ……はっ……」
 ああもう可愛い。そう思えば思うほど我慢がきかなくて、腰や背中をなぜる手が熱くなる。
 呼吸の合間になぜればひゃと声が出て、それがまた俺をあおる。
「かーわい。もっと……きかせて?」
 わざと耳元でささやけば、ちぃはもっと赤くなって、つばさせんぱい、とかすれた声で呟くのだからもっといわせたくなる。ああどうしてここまでなったのだろうか。

****

 今日は久しぶりの休みで、俺の部屋で一緒に研究をしていた時だった。
「翼先輩って、目悪かったんですか?」
 今気が付いたかのようにちぃはきょとんと俺のメガネを指さす。そういえば、ちぃの前でメガネはほとんどかけてなかった気がする。
「んーん、目はいいよ。かっこいいだろ!」
 ぬはは、と笑いながらいう。
 ぬいぬいにもらったんだ、とぼそりとこぼすけど、ちぃは聞き取れなかったみたいできょとんとしている。ぬいぬいがかけているメガネにあこがれて、ぬいぬいにもらったメガネをかけていたけど、最近はもうなんだか習慣のようになってしまっている。
 ちぃは目が悪いみたいで、たまにメガネをしているから気になったのかもしれない。
「……かっこいいですよ、」
 ぽろりとこぼれたように聞こえた言葉は言った本人が一番びっくりしていたようで、あわあわとしている。かわいいなぁ、とそう思うけどちょっと意地悪したくなって、ぐいっと顔を近づけていう。
「……メガネかけてるのと、かけてないの、どっちが好き? どっちがかっこいい?」
 ぼっと音を立てたように顔が真っ赤になって、え? と戸惑うちぃがかわいくて、ねぇどっち? とわざと低い声でいう。ちぃはもうあわあわとして視線をあっちこっちに移動させてはあーとかうーとか唸って、いう。
「……どっちも、かっこいいです、でもあんまりみないので、メガネが新鮮で、」
 ドキドキしますっていう言葉はもうぼそぼそっと消え入るような声だったけど、この至近距離だったから俺にも十分聞こえた。ああもうどうしよう、かわいい。
 たまらくなって、キスしていい? と聞くともっと赤くなってはい、と消え入るような声で言う。どうしよう、もうさっきからかわいい、としか思ってない。
 でも、かわいいんだ。
 ちゅっとおでこにキスをすれば、ちぃはそろそろと目をあけてこちらをうかがう。
「ん? こっちだと思った?」
 そういって唇を指でなぞれば、もう半分泣きそうなちぃは、こくんと頷いた。あ、だめだこれは、なんだかもう。
 そう思えばちぃの腰を引き寄せて、唇にキスを落とす。最初は合わせるだけのものだったのに、どんどんと啄むようにちぃの唇をはむと、ぴく、と腕の中でちぃが震える。
 かわいいかわいいかわいいかわいいかわいい、そう思っても、もっとかわいいところがみたいと、自分の中の欲望が震えた。唇だけでは物足りなくなって、耳をはんだり、ほっぺたをはんだり、顔中をはむ。
 ちぃはもうびっくりしたように、え、と声を漏らすけど、そんな声もかわいくて、ああもう自分は重傷だな、と思う。耳元でふぅと息を吹きかければ、びくっとふるえ、耳にわざと音を立ててキスをすればんっ、と声を出して震える。
 ああもっと聞きたいな、みたいな、そう思えばもう止まらなくて。
「嫌だったら、叩くなり噛むなりして止めて」
「……え?」
「たぶん自分じゃ止められない、」
 残ったほんの少しの理性が、ちぃに警告をする。でも叩かれて止まれるかなー、頭の一部がそんなのんきなことを考えているけど、たぶんちぃが本気で嫌がったら止まれる、はず。
 そう思いながら、え、の形にあいたままの唇をぺろりとなめる。びくりと体は震えたけど、嫌がるそぶりは……ない、かな。
 片手を頭の後ろに持っていて、頭を固定し、舌をそろそろと口内へ侵入させる。さっきよりも大きく震えて、俺の服をぎゅって握るけど、嫌がってない……よな?
 そう思えばもう止まらない。怖くない、かな。そう思いながら、舌で歯ぐきや、口内をなぞる。
 ちぃの舌は、奥の方でまだびくびくして、こっちに出てこない。ぬぅ、はやくこっちにこないかなぁ。そう思いながらつんつんすると、もっと奥へ逃げていく。
「っは……」
 苦しそうだったので、少し離して、呼吸させる。ちぃはもう真っ赤で、はぁはぁと肩で息をして、目を潤ませている。
 ああもうかわいいなぁ。
 あと、
「せっかくちぃがドキドキしてくれるけど、キスするのに邪魔」
 そういってメガネをはずす。顔にあたってなんだか邪魔。
 ちぃは視線を合わせてくれなくて、覗き込むようにみれば、さっきとは比べ物にならないくらい真っ赤で、視線を泳がせている。
 おでこをこつんと合わせて、どうしたのか問えば、うー、とかあー、とか唸った後に、
「なんか、恥ずかしくて……」
 と至近距離から少し笑いながらいうちぃが、いつも以上にかわいくて。そのまま引き寄せて、抱きしめる。
 よっぽど恥ずかしかったのか、ちぃの体はひどくあったかかった。突然引き寄せたことで、びっくりしたのかあわあわするちぃの耳元に口をよせ、囁く。
「もっと、キスしたい……今の、ふかぁいやつ」
「え……っ」
「ダメじゃなかったら、応えてほしいな」
 もう、かわいくてかわいくて歯止めがきかなくなりそう、だな。のんきにそんなことを頭の片隅で思いながら、かみつくようにキスをする。
「っへ……んっ」
 声が、きこえると、ぞくぞくっとして、ああもっとききたい、と思う。恐る恐る、といったように舌を差し出してくるちぃは、ああもうかわいくて、すぐに絡め取る。
 そうすればまたびくっと体をすくませて、ああびくびくしてるのもかわいいなぁ……。
 そうして冒頭に戻る。
 それもこれも、ちぃがかわいいのがいけない、そうおもいながら、手は勝手にちぃの背中や腰をなぜる。そうするうちに自分の体も熱くなって、ちぃの体が熱いとは感じなくなってくる。
 ちぃの舌を吸ったり、口内を丹念に舐めとりながら、薄く目を開ければ、必死になってこたえようと頑張るちぃが目に入って、ああもうもっとしたい。呼吸をはさみながら、どんどんどんどん深く、深くしていけばー……とちぃがくた、っと体をこちらに預けてくる。
「っは、大丈夫?」
「大丈夫、です、」
 どうやら力が抜けてしまったみたいで、くったりとしているちぃは可愛い。でも研究と発明をしている途中でキスを始めたから、周りには危ないものがいっぱいあるし、すこし心配。
「ひゃあああなにするんですかああ!」
「んー、危ないからこっちで、ね」
 抱き上げるとちぃはわああとあわてながらいうけど、力は入らないみたいでくったりしてる。やっぱり危ないなぁ、と思って、ベッドへちぃをおろす。
 さっきの名残でうるんだ目、上気した頬、俺を見上げる上目使い……ああもうだめだ。そっと押し倒そうと、ちぃの上に覆いかぶさって……
 ゴンッ
「っい!!!」
「!」
 ちぃが、後ろの壁に頭をぶつけて、さっきとは違う涙で瞳がぬれる。ああ、あ、と思って大丈夫?と聞きながらよしよしと頭を撫でる。
 さっきまでの色っぽい空気は霧散してしまって、残念だと思う反面、とてもちぃらしいなぁと思ってしまった。
「大丈夫ですー」
 そういって恥ずかしそうにちぃは笑った。
 涙目で笑うちぃはとてもかわいくて、ああもうかわいい、ぎゅっとそのまま抱きしめて、耳元で「続きはまた今度、な」とそういえば、ちぃはまたぼん、と音を立てたように顔を赤くしてえーとかうーとかあーとか唸り声をあげる。ああもうかわいいなぁ。

まだ早い、?

(このまま食べちゃいたい、)(でもまだ我慢、かな)