「たか兄、部活見学行きたいんだけど、どうしたらいいの?」
 私は入学してすぐ、たか兄のところへいってそう聞いた。ちょうど一緒にいたのが弓道部の部長さんだったようで、今日の放課後に連れて行ってもらうことが決まった。
 眉間にしわがよって怖そう、と思ったのが第一印象だったけど、たか兄が楽しそうだったからきっといい人なんだろう。女子の先輩(これまで学校で唯一の女子生徒だった人!)が弓道部らしく、放課後に迎えに来てくれるらしい。
 ううん、女子の先輩がいて、もっと楽しみになった。

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「ええっと……星咲智里ちゃん、いる?」
「あ、はい!」
 かわいらしい先輩が、ミルクブラウンの長い髪を揺らしてひょっこり、といった風に顔をのぞかせた。小さくて(たぶん160cmもないんだろうなぁ)かわいらしい。
 あわてて詰めた鞄を持って先輩へと駆け寄る。今日はよろしくお願いします、と頭を下げると、こちらこそよろしくね、とぱっと花が咲いたような笑顔をくれました。なんてかわいいんだ。

 先輩が夜久月子、という名前で月子って呼んでねと笑ってくださったので月子先輩と呼ばせてもらうことにした。月子先輩はたか兄と一緒の三年生で、天文科だそうだ。
 弓道は楽しいし、昨年に道場に女子更衣室を作ってもらって便利だという話も聞いた。そんないろいろなお話をしていたら、いつの間にか道場についていたようだ。
「ここが道場だよ」
「失礼します」
 何人もいる先輩たち、と女性?と思ったけど女の先輩は月子先輩だけだと言っていたからきっと男の先輩(女の子みたい!)。たか兄も真面目に練習していてなんだか別人のようだ。わくわくしながら見ていると、部長さん、がこちらにきた。
「星咲、だったか……ゆっくりみていってくれて構わない」
「あ、ありがとうございます」
 そういってふっと笑うと、練習に戻っていった。ほお、笑うとかっこいい。
 っていうか、見ていていいんだけど、これいつまでいていいのかな……おおうどうしよう。入部したいってことをいつどのタイミングで誰に伝えればいいのかな。月子先輩なのか、部長さんなのか。
 今? 部活終わってから? っていうかそれまでいていいのか……というよりも顧問の先生はいないのか。おろおろはしてなかったと思うけど、悩んでいたらいつの間にかたか兄が目の前にいて、ぐりっと頭をつかんで(痛い!)ずるずると引きずられた。
「こいつ入部で」
「たか兄いたい!」
 ずるずると引きずられた先は部長さんだったようで、部長さんは眉間にしわを寄せたままそうなのか? と聞いた。聞くのはいいけどとりあえず離せ痛い!!
 つかまれている腕をぺしぺしと叩きながら、はいお願いします、といえばそうか、と少しほほ笑んでくれた。

これからよろしくお願いします!

(たか兄いい加減離せ!)(楽しそうな人が多いなぁ)