太陽が輝いているにもかかわらず雨が降っている。水たまりや草木に宿る雫がキラキラと輝いていた。
 道を歩く人は、皆がひどくいやそうな顔をして傘をさしている。花穂だったら顔を輝かせるのだろうと思えば、思わずくすりと笑がこぼれた。
 なぜあんなにも雨が好きなのか、さっぱりわからない。けれど、雨が降れば窓にへばりつき、出かけるとなればレインコートにレインブーツ、傘にカバンまで防雨性で万全で出かける花穂はいつだって笑顔だ。
 家に近付くにつれて雨が小粒になってくる。太陽の光を反射して、まるで光が降ってきているようだった。光、むしろ星のようで。
 夜だったら本当に宇宙にいるような気分だと錯覚するのだろう。夜だったらこんなにも雨粒が輝くことはないということを除けば。
 家のすぐ横の公園の中心に、人がいた。キラキラと輝く星をまとって、空を見上げているその人は、
「……花穂、」
 まるで全く違うもののように、そこに佇んでいた。竹取物語のかぐや姫が月からの迎えを待つかのような、凛とした雰囲気。
 いつもの完全防備とは程遠い、白いワンピースにサンダルだけの姿でそこにいる。なんでよりにもよって白なんだとか、どうして傘も持ってないのかとか、なにしてんのとか、言いたいことはたくさんあるけれど、それよりもなによりも、

雨の中にただ佇んで、

(消えてしまいそうで、)(オレは、)