「花穂、」
 気が付いたら、花穂の腕をつかんで呼んでいた。かすれてほとんど出ない声は、それでもオレの存在を主張するには十分だったようで。
「エル、くん……?」
 ぼおっとしたような表情をした花穂は、白いワンピースのせいかひどく儚く見えて今にも消えそうに思える。花穂をつかむ手に力を込めた。
「なに、してるの、」
「雨が、お星さまみたいにキラキラして綺麗だったから、つい」
 同じことを思っていたうれしさよりも、怖さがまさる。綺麗だったから、一緒になってどこかに行ってしまいそうで?
「風邪ひくよ」
 早くこの幻想的な世界から抜け出したくて、花穂が"ココ"にいると確かめたくて。こたえなんか聞かずに強く手を握って歩き出した。

キミの手を握りしめて

(早く早く)(消えないで)(杞憂ですませて)