後ろから伸ばされていたらしい腕に捕らえられて、脳天に頬らしき柔らかい感触が襲った。抗うことなんか、できない。大好きなこの腕にとらわれているようで、本当はわたしがユキを捕らえているのだろうと思うと吐き気がした。
「アンタ、俺がいないとほんとダメですよね」
 その声に呆れた色なんて一つもなくて、それどころか嬉しそうに言うのだから心臓が変な音を立てて軋む。「なんて、」小さくこぼれた声に頭をあげようとすれば腕がぎゅっとしまって身動きがとれなくなった。
「ほんとにダメなのはアンタがいないときの俺なんですけど」
 お互いにお互いがいないとダメなのは、ただの相互依存だとわかっている。わかっているけれど、ダメなものはダメだった。
 だって、ユキのご飯が一番おいしい。ユキが文句を言いながら作ってくれる後ろ姿が愛しい。眠るときにはユキの体温がないと落ち着かない。ユキが笑ってくれないと苦しい。
 ユキ、ねえユキ。わたしたち、二人じゃないとダメみたいだね。
 わたしが一人で生きていければユキはわたしのそばになんかいないでしょう。ねえユキ。わたし、本当は一人でだって生きていけたのよ。
 ユキがこんなダメにしたのよ。だから、
 

責任とって、死ぬまで一人にしないで。