「先輩、この間はありがとうございました! これ、お礼です」
 そう言って手渡されたのは、徳用醤油煎餅の詰合せだった。一瞬虚を突かれてまばたきをしたら、「わたしのおすすめです! あっ先輩サラダ派でした? それともざらめ?」なんて続けるのだから笑ってしまった。
 これまで、お礼なんて言って渡されたものの大半は消費されないものか、手作りのものばかりで、自分の好きなものが渡されたことはなかったのだ。変なところが似ているのかも、と思って「いや、醤油でいい。俺もこれ好きなんだ」手を伸ばした。
 ぱっと顔を輝かせる姿に重ねて笑って一緒に食おう、と誘う。いいんですか? と目まで輝かせる姿に、狙っていたのではないかと思って苦笑した。
 温かいお茶でも淹れて、醤油煎餅をかじって、日向ぼっこして、──そうしてこの後輩が隣で笑っていれば、それが確かに幸せなのだとそう思えた。

確かな幸せ