「おい、それどうした」
　ぎょっとしたように目を剥く轟先輩に、そっと視線を外した。あー、これ怒られる。
　たらりと、額から血が流れたのを自覚してティッシュを出した。なかなか止まらないから、拭ったティッシュを入れたビニールも相まってすごく怖い人に見える。
「いやぁ、隣の人の爆発に巻き込まれたスパナがすこーんと飛んできてどばーっと……傷はたいしたことないんですよ！？　ただちょっと血が止まらないだけで」
「額は血管が多く通ってるからなかなか血が止まんねぇんだ。……保健室は行ったのか？」
　その様子じゃ行ってねぇんだろうけど、といいながらその手に持ったタオルでぐっと額を圧迫してくれた。これ傷口じゃないところが痛い。ええ、行ってないですとも。
「ほら、いくぞ」
「先輩ちょっ」
　額を止血するために掴んだ頭をそのままに歩き出すものだから、足がもつれてたたらを踏む。そもそも手に持ったビニールから覗く赤に、先輩のタオルが血塗れなのでは、と少し震えた。

血塗れタオル

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　ヒーロー科って救助訓練もやるんだった、と思い出したのは保健室から戻った教室の中だった。