小学生の委員会は、五・六年生だけが行う。轟が通っている小学校はマンモス校というわけではないので、各委員会の担当人数は少ない。毎日の昼休みの当番がギリギリまわるくらいであるため、不定期に委員長同士の集まりがある委員長以外は全員がどこかしらの曜日の昼休みに当番が当たった。
 轟は昨年一年を通して図書委員であったため、木曜日の普段より長い昼休みが人気のないポイントであると知っていた。わざわざすき好んでここを選ぶ人が他にいるのならば、それはきっとよっぽどの本好きかとんちきなやつだ。その、よっぽどの本好きがいると思わなかったのだ。
「木曜日、担当したい人?」
「はい!」
 勢いよく手を上げたのは、轟よりも一つ下の五年生、轟も何度か見たことのある人だった。轟は昨年一年間ずっと木曜日を担当していたが、そのほとんどで見ない日がないくらいに図書室で過ごしていた彼女はまごうことなき『本好き』だろう。
 本が好きで図書委員をしているやつらは、彼女が図書室のヘビーユーザーだと知っていてその勢いに納得した。押し付けられたやつなんかは知らないのだろうが。
 チラリと、同学年のやつらが轟に視線を寄越して、『おまえはいいのか?』と問いかけているようだった。だいたいは同じクラスのやつと同じ曜日を担当するが、彼女の同じクラスのやつは手をあげそうにない。知らないやつとでもいいか、と轟は手を挙げた。
「俺も」
 結局、そうして轟の木曜日担当は延長された。轟が木曜日を担当したがるのは、木曜日にイベント委員会なるものがイベントを主催するためにほとんど人がこないということに他ならない。イベントは任意参加とはなるが、参加するやつは多いのだ。
 すべての曜日の担当が決まり、一度曜日担当でわかれて内容の確認をする。委員長や先生がフォローに回って、注意事項を細かに指摘していた。
「轟は去年一年木曜担当だったし、わからないことは轟にきけばいいよ」
「はいっ」
 先生がにこにことそんなことを言うものだから、轟は「……よろしく」と言うしかなかった。

はじめまして

 そんな彼女と、一年間まるまる同じ曜日を担当し、中学に入ってからも同じように担当があって──あまつさえ、高校まで同じになるなどと、このときの轟には全く想像がつかなかったのだった。