毎日会っても焦がれるよ

title by spiritus


 そろそろシャンクスがフーシャ村に帰ってくるらしい、と聞いてルフィは楽しそうに俺に言う。

「俺さ、海賊になりてェんだ」
「うん、何回も聞いたよ」

 夜空に輝く星々に負けないくらいの煌めきを纏うルフィ。引っ込み思案で、身体を動かすより本を読む方が好きな俺とは正反対だ。

「なァ、レイシも行こうぜ」
「いいよ、俺は。俺は海に出るより、この村を守っていく方が性に合ってると思うんだ」
「ふーん……」

 ルフィは疑うような目でこちらを見てくる。ばつが悪くなり視線を外した。

「……ルフィはさ」
「ん?」
「何でそんなに海に出たいんだ?」

 待ってましたと言わんばかりに身を乗り出してくる。

「この海の向こうにはさ、俺たちの知らない世界が広がってるんだぜ? すげェと思わねェか? だってさ、俺たちはここで生まれてここで育ったのに!」
「確かに、多分、すごく広いんだよな」
「俺は見たいんだよな、その世界を」

 いつの間にか俺はルフィのその輝く横顔を見ていた。そしてまた目が合う。
 俺はそんなすごい人間じゃない、その心意気の前には恥ずかしいとすら思うのに、どうしても視線を外せなかった。
 そのきらきらとした目を見ていたかったからだ。

「レイシは?」
「え?」
「レイシは何で海に出たくないんだ?」
「……俺は」

 一瞬だけ目線を落とす。
 でもそれだと負けたみたいで、俺がその主張の前に屈したみたいで嫌で、もう一度ルフィの目を見る。

「俺は怖いんだ。その海の先の世界が」
「怖い? 何でだよ」
「未知のものが怖いんだ。そこがお前との決定的な差だと思う」

 ルフィは未知のものとの遭遇すら楽しめるだろう、物心ついてからずっと一緒に居る幼馴染だから分かる。彼はそういう天才的な才能を持っている。だから「海賊になる」と言い出した時も驚きはしなかった。
 でも俺は違う。俺は確実な所で地盤を固めながら進みたいし、その中で生きるのが性に合っている。

「じゃあさ、俺が守ってやるよ。それならいいだろ?」
「え?」
「俺、お前と行きてェんだよ、レイシ。レイシが居なかったらつまんねェと思うから」

 迷いないその言葉に息が詰まった。これだけならただ友情を示しただけと思われるかもしれない。
 けど俺には分かった、ルフィがこんなに真剣に言うのを初めて見た。つまりそういうことだと。

「……ルフィ、」
「行こう、レイシ」

 差し出された手を、少し迷いながら握る。その手を振り払うなんてできないことを多分知ってる。
 夏の気候で少し汗ばんだ手から体温がじんわり伝わってきた。この人とならもしかしたら新しい景色が見られるかも、なんて夢でもいいから信じたい。



2018.06.10