交差して見つめ合う少女達

title by spiritus


 漸く光の巫女と闇の巫女が揃った、といつもの調子で言う彼に、レイシは尋ねた。

「ねえ、ボーゼル様」
「どうした、レイシ」
「光の巫女と闇の巫女が揃ったらどうなるの?」
「アルハザードの真の力が解放される」

 返された答えが理解できないのか、首を傾げる。

「じゃあ、真の力が解放されたらどうなるの?」
「混沌の王カオスが復活する」
「カオス様が……」

 その言葉を聞いた時、レイシは漸く、彼女ら巫女が揃ったことの意味をちゃんと理解した様だった。

「カオス様が復活したら、もう我々はこんな狭い場所に居なくてもいいんだよね」
「ああ、そうだ」
「そうか、だったら、早く復活するといいね」

 嬉しそうに言う、そこに居る人々の耳はみな長く、それは魔族の証だった。
 人間たちと相容れず、この世界で同じ様に生きる権利を求めて闇に身を寄せる者たち。
 その魔族の頑なな被害者意識が悪いのか、魔族を信じきれぬ人間たちが悪いのか。そもそも魔族たちを統べる闇の皇子がそんなことを考えたことはなかった。

「しかし1つ問題がある」
「問題? それはなに? ボーゼル様」
「アルハザードの封印が解けてしまえば困る者たちもいるのだ」

 闇の魔剣アルハザードの封印が解かれればこの世に混沌の王カオスの力が甦る。
 そうなればこの世界は今のような平穏を保つことはできず、再び混乱が訪れるだろう。
 それに乗じて魔族たちの世界を構築するのが彼らの夢だった。

「あ、分かったよ! 儀式の邪魔をする人たちが来るから、我々はそれを殺せばいいんだね!」
「その通りだ」
「任せて、ボーゼル様。必ず上手くやってみせるから」

 儀式を行うのは明日だ。出来れば早くやってしまえればいいのだが、彼女らの力が完全に戻らねば、完遂するのは難しいだろう。それだけ難しいことなのだ。

「期待しているぞ、レイシ」
「うん!」

 ボーゼルの手が少年の頭に触れた、その無邪気な笑顔はどこにでも居る人間の子供と全く同じものだった。

「ねえ、ボーゼル様。もしカオス様が甦って、我々がこの世界の何処でも生きられるようになったら、もうボーゼル様はどこにも行かなくていいの?」
「……そうだな」

 その質問には、彼は即答はしない。過去のことを思い出しているのだろうか。

「レイシ、お前がそれを望むのなら、そうしよう」
「! 本当に?」
「本当だ」

 魔族として生まれ、ずっとこの世界しか知らないレイシにとって、ボーゼルは絶対であり、世界の全てだった。
 彼はそれを受け入れ、応えて約束した。




2017.11.11