「おかえりい」

 やっと仕事を終えて私の城へと帰宅するとそこには、なんか悪魔なマスコット的なのがいた。テーブルの上でわたしのチロルを貪り食っている、チロルよりちょっと大きい(三つ分くらい)紫色のぬいぐるみ。いや違うな、あれだ、編みぐるみみたいなやつ。デザインはわたし好みだけどわたしのおやつを食べたことに関しては万死に値するしお前誰だ。どういう原理で動いてんだコラ。ということでつまみ上げてやったらアー!と高い声を出してバタバタしている。

「電池どこ?」
「電池じゃない!電池じゃない!悪魔!」
「悪魔ぁ?」

 テーブルに下ろしてやるとてしてしと姿勢を正して、ぽん、と軽快な音を立ててぬいぐるみが煙に包まれる。爆発した、と焦って覗き込むと、

「……え?」
「怠惰の悪魔のタルチ。今日からきみに憑きます」
「は?」
「これ令状」
「令状!?」

 さっきまで手乗りサイズの量産型あみぐるみみたいな恰好だったのに、今度はそこそこ普通のサイズなぬいぐるみになって人形になった。

「ウーンまだ力が足りなくて大きくなれない」
「これがほんとの姿じゃないの?」
「普段は普通に人間とおんなじだけど、今赴任してきたばっかで力が足りないからこっちのぬいぐるみスタイルで」
「(赴任…)」

 折りたたまれてちょっとヨレた紙には確かに「令状」と書かれていたけれど、その他の言葉はさっぱり読めなかった。「読めないよ」と言うと「悪魔語だからね」とさらりと言う、タルチさん?とやら

「簡単に言うと鴇田ゆらさん」
「は、はい。何でわたしの名前」
「言ったでしょ、仕事だって。名前もプロフも全部分かってるから。俺、今日から君の悪魔だから」

 ヨロシクネ!と言われたけど何がよろしくなのか分からないし、きゅるん!と片方閉じられた瞳――いわゆるウインク――があんまりかわいくてムカついて両ほっぺを引っ張ったら思った以上に伸びたし「ひーん!」と短い手足をばたばたさせるのがかわいくて、なんかとにかくかわいかった。